『だれかのいとしいひと』角田光代

だれかのいとしいひと』は、僕が読んだ角田光代さんの小説だけで数えて、33冊目である。それでも追いつけないほど、角田光代さんという作家は沢山の本を書いているし、書き続けている。こうなったら全部読んでやる、そう決心しているのだけど、残りは今のところ12冊になったところである。

だれかのいとしいひと』は、8編の短編小説集である。どの短編を取っても、角田光代さんらしい小説だと思って読んだ。33冊も読んでいると、そうなる。主人公が心の中で思うことが、蕩々と綴られている。ひとつひとつは切れ目のある短い文章だけど、それがどこまで続くのか分からないほど長く続いて行く。そういうところが特徴で、決して読みやすく感じないのだけど、鋭い描写であって、角田光代さんらしさにほっとしたりするのである。

単行本が出版されたのが2002年頃のことだから、初期の角田光代さんらしい短編小説集だろう。短編の中でどれが良かったか、という順位は付けがたい短編ばかりだったと思う。
(27冊目/2012年)

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『キャベツ炒めに捧ぐ』井上荒野

井上荒野さんという作家の本を読んだのは、この本『キャベツ炒めに捧ぐ』が初めてのことである。この本のことを知って初めて出会った作家だと言える。ネットで検索してみたら、案外著書も多いことに気付き、直木賞作家であることも初めて知った。しかもこの本を買ったのは、タイトルと装丁に惹かれるところが大きかったからである。そういう選び方をする場合があるのは、僕だけのことではないと信じている。書評などで内容を知っていなくても、たまには装丁の素敵さやタイトルに惹き付けられて買うこともあるだろう。

ある惣菜屋で働く三人の熟女の物語である。それぞれが切ない思いを抱えつつ、惣菜屋で美味しいものを作って売っている。そんな三人と絡む登場人物と、三人それぞれのいろんな話が、短編小説のように語られ、全体として流れを作る。三人の女性が交互に主人公となって、物語は進んで行く。それぞれに抱えるものはあるけれど、それが決して重くないように綴られているところが、サラッと読める淡泊な小説として仕上がっている。

初めて読む作家の本が、面白いか面白くないかの判定は、実は1冊だけでは難しい。いつか機会があれば、もう1冊読んでみて判定したいと思っている。また目に付いた本があったら、買って読んでみることにしたい。
(26冊目/2012年)

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『ツリーハウス』角田光代

3日間と朝の約1時間を使って、470ページの本を読み終えた。目標の一日150ページをほぼ達成することができた。

これまでの角田光代さんには無かったような、小説だったと思う。もちろん、表現や文章は読み慣れた角田光代さんのものだったけれど。『ツリーハウス』は、祖父母が生きた時代から孫の世代までの家族3代の物語である。祖父が亡くなった時から物語は始まり、祖母の回想シーンとして祖父母の生きた時代が語られて行く。ある家族の3世代を描いた小説は、僕がこれまで読んだ角田光代さんの小説には無かった。そういう意味で、これまでには無かったような角田光代さんの新しい小説のような印象を受けた。読み応えも十分にあるし、角田光代さんらしい読みにくさもある。

読み終えた後の感覚は、悪くない。でも、ある家族の人生を綴った物語なのだけど、それを通じて著者が言いたかったことは、わかったようでわかっていないようで、何となく漠然とした感覚が残った。人の一生の意味をはっきりと言うことは難しいから、人生とはそういうものかも知れないな、とそんな感覚である。長編を読み終えた満足感もあるし、言い換えればたった500ページ弱で3世代の人生を見て来た気分になった。小説とはそういうものかも知れないなと思った。
(23冊目/2012年)

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『空の冒険』吉田修一

今日一日で読み終えた。ANAグループ機内誌「翼の王国」に掲載された短編小説12編とエッセイ11編を集めた本。短編小説と言っても、10ページ足らずでとても短い小説である。こういう構成の本は、他にもあった気がする。『あの空の下で』であるが、この本も「翼の王国」掲載の小説とエッセイを集めた本だ。空とか飛行機とかが、モチーフになった小説が多かった気がする。エッセイはあまり記憶が無い。

今回の『空の冒険』のエッセイは、外国の話が多かった。そんな中で一番印象に残ったのは、『悪人』のロケ地を後から回った話だった。撮影に立ち会うのではなく、撮影後に著者がその場所を歩くことがあり、小説に対する独特な思いを持っているのだと感心するところがあった。小説の方は、サクッと読みやすいものばかりだったせいか、あまり印象に残っていない。吉田修一さんの短編小説は、センスが良いけれど、あっさりし過ぎている感じがする。読後感もあっさりしていて後味があまり無かったりする。そういう特徴が出ている本なんだろうけど、読み応えの面ではやや物足りなさを感じてしまうのだ。
(22冊目/2012年)

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『センセイの鞄』川上弘美

川上弘美さんの本は、小説で言うとこれで3冊目。作品は全部読んでみようと思っている割にまだ少ない。『センセイの鞄』は、これがびっくりするほど、面白かった。これくらいのボリュームだと確実にもっと読了までの時間がかかっていた筈だけで、あっと言う間に読み終えた感覚だった。

解説によると、出版されたのは2001年のことで、それまでは知る人ぞ知るという作家だったらしいけど、この本で大ブレイクしたようだ。世のおじさま連中に希望をもたらした功績は大きいらしいが、残念ながらその頃は知らなかった。だいたい今のように本も読んでいなかった。

主人公のツキコと、高校で国語を教わったセンセイが居酒屋で再会し、絶妙な距離を保ちつつ二人の物語が展開する。相当の歳の差があり、ツキコさんも若くは無いのだけれど、ツキコさんの方からセンセイに惹かれて行く。こう書くと、どこにでもあるような恋愛小説を連想されるかも知れないけれど、二人の会話や距離感みたいなものがとても絶妙で、面白いのである。きっと他の作家が書くと、特にストーリーの盛り上がりが無くて、退屈な小説になってしまったかも知れない。一歩間違えばそうなっていたかも知れない小説が、ぐいぐいと読者を惹き付け、一気に読みたくなってくる。

川上弘美さんの本は、いろいろ読んでみたいと思っていて、積ん読本の中にもまだ2冊も入っている。この『センセイの鞄』を読んでみて、もっともっと読みたいという気持ちが強まった。
( 18冊目/2012年)

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『真夜中のマーチ』奥田英朗

本の帯を見て、これは去年の夏頃に買ったんだと気付いた。それにしても、奥田英朗さんの小説はとても面白い。僕にとっては、外れなしの作家である。実はこの本の前に書かれた『最悪』も積ん読本の中に入っていて、分厚い本なので読み始めるのを躊躇しているのだけど、この『真夜中のマーチ』を読んでみて、分厚くてもあっと言う間に読めそうな気がしてきた。この本も300ページを越える本なのだけど、ほとんど一気に読み終えることができたからである。

同じ25歳の男女3人が出会い、大金を奪うための完全犯罪を目指して協力し合うというのが、ストーリーなのである。伊坂幸太郎さんの『陽気なギャングが地球を回す』のシリーズを思い出してしまったが、こちらの方は極めて分かりやすい小説である。そして次の展開へとどんどん読み進めたくなる。伊坂幸太郎さんの小説は前半部分は登場人物のキャラクターやバックグラウンドを理解するために、スローペースで読み進めることが多いが、奥田英朗さんの小説はいきなり最初から、どんどんペースが上がる感じだ。

奥田英朗さんの小説は、出版順を気にしないで、気になるものから読んでいる。そろそろ出版順に読み進めて行こうかなという気持ちになった。次はとてもボリュームの大きな小説『最悪』を読むつもりだ。
(15冊目/2012年)

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『花まんま』朱川湊人

朱川湊人さんの本は、『花まんま』が2冊目。初めて読んだのは『かたみ歌』だけど、不思議な物語でちょっと切なくなるような話が多いという印象だった。今回も同じ印象だった。短編が基本というのも、どちらにも共通したところで、そういう意味ではこれが朱川湊人さんの小説のテイストなんだろう。不思議な話なのだけど、怖い話ではない。

短編の中で最も印象に残ったのは、「トカピの夜」かタイトルになっている「花まんま」だった。「妖精生物」もとても面白かった印象が残る。読んだ後で振り返ると、それぞれの短編がそれぞれに良かったと思う。そんな中でも、やっぱり「トカピの夜」については、印象深い。ネタバレになるので、ストーリーには触れないけれど、子供だから故に犯してしまう罪悪感みたいな痛みがあり、後味はまずまずだったと思う。
(14冊目/2012年)

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『まほろ駅前番外地』三浦しをん

今月の目標のひとつは、ガツガツ本を読むこと。来月上旬頃にあるだろうと思っているルミネ10%オフセールでの本の買い出しに備え、1か月強でできるだけ本のストック減らしをしておこうという目論見だ。昨日から読み始めていた『まほろ駅前番外地』だけど、幸先良く2月初日から読了することができた。

まほろ駅前多田便利軒』でお馴染みの登場人物にまつわる短い物語で構成されていて、短編集なのかなと思ったら、物語には連続性があった。続編から先に読まない方が良さそうな感じで、つい最近DVDで映画を観たのは良かったと思った。

この物語は、便利屋をやっている多田と、そこへ転がり込んで来た行天のふたりのコンビが中心である。このふたりに絡むいろんな登場人物のキャラクターが面白い。なぜかバスが間引き運転をしていると疑っているおじさんとか、生意気な小学生由良公だとか。もちろん、主役のふたりのうちひとり、行天のキャラクターに勝る者はいないだろうけど。いろんな事件が起き、主役のふたりが絡んで行く。そしてまだまだ行天にはミステリアスな部分を残しつつ、更に続々編に繋がって行く。

読み終えて続々編があるだろうと思ったので、さっそく検索してみたら、やっぱり連載されていた。週刊文春に『まほろ駅前狂騒曲』が連載されていて既に終了しているので、出版は近いと思う。ちなみに検索結果では、これで終わりらしいから、ちょっと楽しみである。
(12冊目/2012年)

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万城目学さんの小説やエッセイは、だいたいのものを読んできた。最新のエッセイ集と、今読んでいるこの小説を読めば、全部読めたことになる。僕の場合、だいたいは作家で本を選んでいる。面白かった本が何冊かあると、その作家の作品をリストアップして全部読もうという気になるから、そういう作家の本は意識的に読むことになっている。

昨日から読み始めた『偉大なる、しゅららぼん』は、頁数が500頁を越える本だから、なかなかの長編である。1頁当たりの文字数も結構多そうな本で、なかなか読み進められない。昨日は睡眠不足気味で電車の中でとても眠くなったこともあるのだけれど。とりあえず、昨日読み進められたのはちょうど100頁くらいである。物語が動き始めそうなところまで読み進めた感じだ。

この土日も意識的に読み進めることをしたいと思っているけれど、もしかすると今月いっぱいかかって読み終えることになるかも知れない。今のところ、面白そうな小説だと思っているところだ。

 

万城目 学
集英社
発売日:2011-04-26

 

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『サヴァイヴ』近藤史恵

サクリファイス』や『エデン』とこの『サヴァイヴ』が違うのは、この本が短編集だということだ。前作までの物語の余話と言うか、前作以前の話やその後の話が短編小説になっている。登場人物はどの本のどの人だったっけ、などと思い出しつつ読み進めた。3作連続一気読みの方が良かったかも知れない。その方がどの話がどこと繋がっているかを考えないで、読めてしまうから。

短編よりも長編の方が良かった気がする。長編の方はメインのレース前の緊張感とか、レースでの駆け引きなどが描かれていて、面白くて先へ先へ読み進めたくなる。短編だと盛り上がる前に終わってしまう感じなので、先へ先へ読みたいと思う前に話が完結する。そんな部分が物足りなさを感じた理由だろう。

このシリーズの続きはあるのだろうか。あるとしたら、やっぱり長編にしてもらいたい気がします。さて、近藤史恵さんの本だけど、次はどのシリーズを読もうかな。3月頃までに考えておこう。それまでは本のストック減らしに勤しむことにしたい。
( 10冊目/2012年)

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