『空の冒険』吉田修一

今日一日で読み終えた。ANAグループ機内誌「翼の王国」に掲載された短編小説12編とエッセイ11編を集めた本。短編小説と言っても、10ページ足らずでとても短い小説である。こういう構成の本は、他にもあった気がする。『あの空の下で』であるが、この本も「翼の王国」掲載の小説とエッセイを集めた本だ。空とか飛行機とかが、モチーフになった小説が多かった気がする。エッセイはあまり記憶が無い。

今回の『空の冒険』のエッセイは、外国の話が多かった。そんな中で一番印象に残ったのは、『悪人』のロケ地を後から回った話だった。撮影に立ち会うのではなく、撮影後に著者がその場所を歩くことがあり、小説に対する独特な思いを持っているのだと感心するところがあった。小説の方は、サクッと読みやすいものばかりだったせいか、あまり印象に残っていない。吉田修一さんの短編小説は、センスが良いけれど、あっさりし過ぎている感じがする。読後感もあっさりしていて後味があまり無かったりする。そういう特徴が出ている本なんだろうけど、読み応えの面ではやや物足りなさを感じてしまうのだ。
(22冊目/2012年)

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『センセイの鞄』川上弘美

川上弘美さんの本は、小説で言うとこれで3冊目。作品は全部読んでみようと思っている割にまだ少ない。『センセイの鞄』は、これがびっくりするほど、面白かった。これくらいのボリュームだと確実にもっと読了までの時間がかかっていた筈だけで、あっと言う間に読み終えた感覚だった。

解説によると、出版されたのは2001年のことで、それまでは知る人ぞ知るという作家だったらしいけど、この本で大ブレイクしたようだ。世のおじさま連中に希望をもたらした功績は大きいらしいが、残念ながらその頃は知らなかった。だいたい今のように本も読んでいなかった。

主人公のツキコと、高校で国語を教わったセンセイが居酒屋で再会し、絶妙な距離を保ちつつ二人の物語が展開する。相当の歳の差があり、ツキコさんも若くは無いのだけれど、ツキコさんの方からセンセイに惹かれて行く。こう書くと、どこにでもあるような恋愛小説を連想されるかも知れないけれど、二人の会話や距離感みたいなものがとても絶妙で、面白いのである。きっと他の作家が書くと、特にストーリーの盛り上がりが無くて、退屈な小説になってしまったかも知れない。一歩間違えばそうなっていたかも知れない小説が、ぐいぐいと読者を惹き付け、一気に読みたくなってくる。

川上弘美さんの本は、いろいろ読んでみたいと思っていて、積ん読本の中にもまだ2冊も入っている。この『センセイの鞄』を読んでみて、もっともっと読みたいという気持ちが強まった。
( 18冊目/2012年)

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『真夜中のマーチ』奥田英朗

本の帯を見て、これは去年の夏頃に買ったんだと気付いた。それにしても、奥田英朗さんの小説はとても面白い。僕にとっては、外れなしの作家である。実はこの本の前に書かれた『最悪』も積ん読本の中に入っていて、分厚い本なので読み始めるのを躊躇しているのだけど、この『真夜中のマーチ』を読んでみて、分厚くてもあっと言う間に読めそうな気がしてきた。この本も300ページを越える本なのだけど、ほとんど一気に読み終えることができたからである。

同じ25歳の男女3人が出会い、大金を奪うための完全犯罪を目指して協力し合うというのが、ストーリーなのである。伊坂幸太郎さんの『陽気なギャングが地球を回す』のシリーズを思い出してしまったが、こちらの方は極めて分かりやすい小説である。そして次の展開へとどんどん読み進めたくなる。伊坂幸太郎さんの小説は前半部分は登場人物のキャラクターやバックグラウンドを理解するために、スローペースで読み進めることが多いが、奥田英朗さんの小説はいきなり最初から、どんどんペースが上がる感じだ。

奥田英朗さんの小説は、出版順を気にしないで、気になるものから読んでいる。そろそろ出版順に読み進めて行こうかなという気持ちになった。次はとてもボリュームの大きな小説『最悪』を読むつもりだ。
(15冊目/2012年)

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『花まんま』朱川湊人

朱川湊人さんの本は、『花まんま』が2冊目。初めて読んだのは『かたみ歌』だけど、不思議な物語でちょっと切なくなるような話が多いという印象だった。今回も同じ印象だった。短編が基本というのも、どちらにも共通したところで、そういう意味ではこれが朱川湊人さんの小説のテイストなんだろう。不思議な話なのだけど、怖い話ではない。

短編の中で最も印象に残ったのは、「トカピの夜」かタイトルになっている「花まんま」だった。「妖精生物」もとても面白かった印象が残る。読んだ後で振り返ると、それぞれの短編がそれぞれに良かったと思う。そんな中でも、やっぱり「トカピの夜」については、印象深い。ネタバレになるので、ストーリーには触れないけれど、子供だから故に犯してしまう罪悪感みたいな痛みがあり、後味はまずまずだったと思う。
(14冊目/2012年)

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『まほろ駅前番外地』三浦しをん

今月の目標のひとつは、ガツガツ本を読むこと。来月上旬頃にあるだろうと思っているルミネ10%オフセールでの本の買い出しに備え、1か月強でできるだけ本のストック減らしをしておこうという目論見だ。昨日から読み始めていた『まほろ駅前番外地』だけど、幸先良く2月初日から読了することができた。

まほろ駅前多田便利軒』でお馴染みの登場人物にまつわる短い物語で構成されていて、短編集なのかなと思ったら、物語には連続性があった。続編から先に読まない方が良さそうな感じで、つい最近DVDで映画を観たのは良かったと思った。

この物語は、便利屋をやっている多田と、そこへ転がり込んで来た行天のふたりのコンビが中心である。このふたりに絡むいろんな登場人物のキャラクターが面白い。なぜかバスが間引き運転をしていると疑っているおじさんとか、生意気な小学生由良公だとか。もちろん、主役のふたりのうちひとり、行天のキャラクターに勝る者はいないだろうけど。いろんな事件が起き、主役のふたりが絡んで行く。そしてまだまだ行天にはミステリアスな部分を残しつつ、更に続々編に繋がって行く。

読み終えて続々編があるだろうと思ったので、さっそく検索してみたら、やっぱり連載されていた。週刊文春に『まほろ駅前狂騒曲』が連載されていて既に終了しているので、出版は近いと思う。ちなみに検索結果では、これで終わりらしいから、ちょっと楽しみである。
(12冊目/2012年)

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万城目学さんの小説やエッセイは、だいたいのものを読んできた。最新のエッセイ集と、今読んでいるこの小説を読めば、全部読めたことになる。僕の場合、だいたいは作家で本を選んでいる。面白かった本が何冊かあると、その作家の作品をリストアップして全部読もうという気になるから、そういう作家の本は意識的に読むことになっている。

昨日から読み始めた『偉大なる、しゅららぼん』は、頁数が500頁を越える本だから、なかなかの長編である。1頁当たりの文字数も結構多そうな本で、なかなか読み進められない。昨日は睡眠不足気味で電車の中でとても眠くなったこともあるのだけれど。とりあえず、昨日読み進められたのはちょうど100頁くらいである。物語が動き始めそうなところまで読み進めた感じだ。

この土日も意識的に読み進めることをしたいと思っているけれど、もしかすると今月いっぱいかかって読み終えることになるかも知れない。今のところ、面白そうな小説だと思っているところだ。

 

万城目 学
集英社
発売日:2011-04-26

 

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『サヴァイヴ』近藤史恵

サクリファイス』や『エデン』とこの『サヴァイヴ』が違うのは、この本が短編集だということだ。前作までの物語の余話と言うか、前作以前の話やその後の話が短編小説になっている。登場人物はどの本のどの人だったっけ、などと思い出しつつ読み進めた。3作連続一気読みの方が良かったかも知れない。その方がどの話がどこと繋がっているかを考えないで、読めてしまうから。

短編よりも長編の方が良かった気がする。長編の方はメインのレース前の緊張感とか、レースでの駆け引きなどが描かれていて、面白くて先へ先へ読み進めたくなる。短編だと盛り上がる前に終わってしまう感じなので、先へ先へ読みたいと思う前に話が完結する。そんな部分が物足りなさを感じた理由だろう。

このシリーズの続きはあるのだろうか。あるとしたら、やっぱり長編にしてもらいたい気がします。さて、近藤史恵さんの本だけど、次はどのシリーズを読もうかな。3月頃までに考えておこう。それまでは本のストック減らしに勤しむことにしたい。
( 10冊目/2012年)

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まほろ駅前多田便利軒(DVD)

前に読んだ三浦しをんさんの『まほろ駅前多田便利軒』ですが、とても面白くて印象に残っていましたが、続編の『まほろ駅前番外地』も買って大切に取っています。要するに積ん読になっているのですが、読みたいと思う本はすぐに読むと勿体ない気がしてしまう変な癖もあります。映画化されたということも知っていて、少し興味を持っていたのですが、結局映画館では観ませんでした。

お天気の良くないこの土日に何か観ようかなと思い、一昨日の会社からの帰り道珍しくレンタルビデオショップに立ち寄りました。その時に一番に目についたのが、このDVDでした。あまり迷わずに借りてみることにしました。金曜日の夜すぐに観るのではなく、昨日のお昼前に観ました。何故なら、夜観てしまうと必ず眠くなってしまうからです。早起きの弱点です。

昨日観てみて、夜観なかったのは正解だったと思いました。もともとゆるい話で、特にハラハラするような場面はあまりありません。友達の危機みたいな場面はあったと思いますが、それも小説の上ではハラハラした記憶も無いのです。むしろそういうことを一大事と受け止めてバタバタするような話ではなかったと思います。

映画と原作とどちらが良かったかと言うと、やはり原作の方です。比べるのは良くないかも知れませんが、そういう印象でした。もちろん、どちらも面白いし、むしろ映画化した方が良いみたいな小説もあります。原作が持っている良さを映画化して表現できないと、ちょっと残念な映画になってしまう気がします。そろそろ続編の『まほろ駅前番外地』を読むことにしたいと思います。

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『風の中のマリア』百田尚樹

近藤史恵さんの『サクリファイス』を読んだ時のような驚きがあった。自転車競技のことは全然知らないから、自転車競技の小説を読んでも面白いかどうか分からない。読んでみたら、面白くて仕方無いくらいだった。しかも自転車競技のルールや面白さをわかりやすく書いていた。この『風の中のマリア』も読む前は不安だった。蜂が主人公の物語なんて、本当に面白いのだろうか。アニメだったら分からないではないけれど。そんな疑いを持ちつつ、読んでみたらとても面白い。しかも蜂の生態に関しても忠実に描かれている。退屈な学術本ぽい小説なんじゃないか、みたいな気持ちはすぐに消え去ってしまった。

この本を読めば、オオスズメバチの生態を中心として、いろんな蜂の生態を知ることができる。もちろん、小説だからそれを伝えることが、物語の意図ではないだろう。人間の生涯を描こうとすると、大長編小説が出来上がりそうだけど、たった三十日間の命のオオスズメバチの生涯を描くには、これ一冊で十分なのだ。もちろん、人間と蜂の生涯を一緒にはできないけれど、何か共通するものを感じるのである。長いか短いかの違いはあっても、同じ生命体なのだから、生きるということに共通する意味はあるのだと思う。そういう意味でも、とても面白い小説だった。

オオスズメバチの帝国を守る戦士”疾風のマリア”の物語は、冒険あり戦闘シーンありで、理屈抜きで面白い。虫を主人公にしても、こんなに面白い小説が書ける百田尚樹さんの本を、他にも沢山読みたくなった。
(8冊目/2012年)

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『真夜中のパン屋さん』大沼紀子

いつもは決まった作家の本を読むことが多いのだけど、時々は初めて読む作家の本が欲しくなる。『真夜中のパン屋さん』は、本屋さんで並んでいるのが何となく気になっていた。表紙の装丁が少女漫画ぽいので、恐る恐る買った本でもあった。

読み始めるとそういう心配も無くなった。面白い小説だった。登場人物のキャラクターが面白いし、それぞれが持つ内面や重い体験など、それなりの読み応えもあった。パン屋さんのオーナーの暮林さんのキャラクターに癒されるし、時々とても深いことを言う。暮林さん自体も重い経験を持っているのだけれど、とても良いキャラクターなので、あんなふうになりたいと思ってしまう。

混雑で殺気立ち、とげとげしくなってしまう満員電車の中で読むと、心も少し丸くなってしまう、そんな小説でした。続編も是非読んでみたいと思っています。
(7冊目/2012年)

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